高齢期を迎え、これからの住まいについて考え始めたとき、「有料老人ホーム」という言葉を耳にする機会が増えるのではないでしょうか。しかし、有料老人ホームにはいくつかの種類があり、それぞれ特徴が異なります。その中でも、比較的自由度の高い暮らしを求める方に注目されているのが「住宅型有料老人ホーム」です。
今回は、住宅型有料老人ホームがどのような施設なのか、その特徴やメリット・デメリット、そして選ぶ際のポイントについて詳しく解説します。ご自身やご家族にとって最適な住まい選びの参考にしてください。
住宅型有料老人ホームは、主に自立あるいは比較的介護度が低い高齢者を対象とした居住施設です。食事の提供や掃除・洗濯といった生活支援サービス、緊急時の対応などが受けられますが、施設スタッフによる直接的な介護サービス(入浴介助、排泄介助など)の提供は義務付けられていません。
ただし、多くの住宅型有料老人ホームでは、訪問介護事業所やデイサービスセンターなどが併設されていたり、外部の介護サービス事業者と連携していたりします。そのため、入居者は必要に応じて、外部の介護サービスを個別に契約し利用することができます。
・介護付有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)との違い: 介護付有料老人ホームは、施設スタッフによる24時間体制の介護サービスが提供されるのが大きな特徴です。介護度が重くなっても住み続けやすい反面、住宅型に比べて費用が高くなる傾向があります。
・サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)との違い: サ高住は、安否確認や生活相談サービスが基本で、比較的自立度の高い高齢者向けの賃貸住宅です。住宅型有料老人ホームと同様に、介護サービスは外部事業者との個別契約が一般的ですが、契約形態が賃貸借契約である点が異なります。(住宅型有料老人ホームは利用権方式が多い)
1.自由度の高い生活が送りやすい:
介護サービスがパッケージ化されていないため、自分のペースで生活したい方、日中は趣味や外出を楽しみたいアクティブな方にとっては、比較的自由な生活を送りやすい環境です。必要なサービスだけを選べるため、過剰なサービスを受ける必要もありません。
2.初期費用や月額費用を抑えられる場合がある:
介護付有料老人ホームと比較して、介護サービス費用が含まれていない分、初期費用や月額利用料が抑えられている場合があります。ただし、外部の介護サービスを多く利用する場合は、総費用が高くなる可能性もあるため注意が必要です。
3.レクリエーションやイベントが充実している施設も:
多くの施設で、入居者同士の交流を促すためのレクリエーションや季節のイベントなどが企画されており、充実したシニアライフを送るためのサポートが期待できます。
4.外部の介護サービスを自分で選べる:
馴染みのデイサービスや訪問介護事業所がある場合、入居後も継続して利用できる可能性があります(施設の方針や契約状況によります)。自分に合ったサービスを選びたい方にとってはメリットとなります。
1.介護度が上がると住み替えが必要になることも:
施設によっては、介護度が重くなった場合や医療的ケアが必要になった場合に、退去を求められることがあります。入居前に、介護度が変化した場合の対応について確認しておくことが重要です。
2.介護サービスの利用には別途契約と費用が必要:
介護サービスを利用する場合は、その都度外部の事業者と契約し、利用した分だけ費用が発生します。どの程度の介護サービスが必要になるかを事前にシミュレーションし、総費用を把握しておくことが大切です。
3.24時間体制の介護が必要な方には不向きな場合も:
施設スタッフによる直接的な介護は提供されないため、常時見守りや夜間の頻繁な介護が必要な方にとっては、対応が難しい場合があります。
4.施設の質やサービス内容にばらつきがある:
提供される生活支援サービスの内容や、連携している介護サービス事業者の質は施設によって異なります。見学や体験入居を通じて、しっかりと確認することが求められます。
将来の心身の変化を見据えた検討: 現時点での健康状態だけでなく、将来的に介護が必要になった場合のことも考慮し、施設がどのような対応をしてくれるのか(外部サービスとの連携、住み替えの必要性など)を確認しましょう。
費用体系の確認: 月額利用料に含まれるサービス内容、別途費用が発生するサービス(特に介護サービス)について詳細に確認し、総費用を把握しましょう。
スタッフの対応や施設の雰囲気: 見学時には、スタッフの対応や入居者の表情、施設の清潔感、共用スペースの使われ方などを自分の目で確かめ、自分に合った雰囲気かどうかを感じ取ることが大切です。
立地や周辺環境: 家族が訪問しやすいか、買い物や通院に便利な場所か、静かで過ごしやすい環境かなど、立地条件も重要なポイントです。
体験入居の活用: 可能であれば体験入居を利用し、実際の生活を体験してみることをお勧めします。食事の味や量、他の入居者との相性、夜間の静けさなど、パンフレットだけでは分からない情報を得られます。
住宅型有料老人ホームは、比較的お元気なうちから入居し、生活支援サービスを受けながら自分らしい暮らしを続けたいと考える方にとって、魅力的な選択肢の一つです。しかし、メリット・デメリットをよく理解し、ご自身の心身の状態やライフプラン、そして経済的な状況と照らし合わせて慎重に選ぶことが何よりも大切です。